ここ「音楽室ゆう」では、先生(つまりは私一応・・)が引っ張っていく、というレッスンを極力しないようにしています。
レッスンを受ける本人にいろいろと考えてもらい、それに沿う形でレッスンを進めることを大切にしています。
以前も書いたことがありますが、今回も、「レッスンをしている曲をいつ終わりにするか」という内容です。
本人の立てた目標は達成できたのに、「まだこの曲は終わりにしない」という意思表示をした子のお話です。
曲を始めるときにゴールを設定します
「音楽室ゆう」では、レッスンを始めたばかりのころは、いわゆる導入テキストを順番に進めていく形を基本としています。
でも、ある程度弾けるようになってくれば、やりたい曲を選んでレッスンをしていきます。
この子はもう自分で選んでもらう段階ですが、決めた曲の練習までをすべて丸投げにはしていません。
新しい曲を始めるときに必ずチェックしなければいけないこと、調や速さ、構成、音楽記号の意味などを、「練習シート」に記入してもらいます。
具体的な練習内容、お家でやることもその都度書き入れ、これが「レッスンノート」になります。
そのシートには、なぜこの曲にしたのか、弾けたらどんな気分か、といった自分の気持ちを書く欄も設けています。
それに併せて、どんな風に弾けたら終わりにするのか、も書いてもらい、自分としての完成イメージを持ってもらっています。
目標は「止まらないで弾く」できるようになったけれど・・
この子のやっている曲は『はじめてのギロック』の中の1曲です(後ろの方の曲)。
立てた目標は「止まらないで弾く」というものでした。止まらないで弾けるようになったらこの曲は終わりにする、ということですね。
指使いやリズム、どうも指がもつれがちになるところの弾き方など、いろいろと練習を重ね、止まらないで最後まで弾きとおすことができるようになりました。
止まらないで弾けるようになったし、この曲、そろそろ終わりにする?
(首を振る)
まだ、続けたいんだね。
どこか、何か、気になるところがある?
・・・・・・
うまく言葉にできないんですね。
でも「まだやめない」という意思表示ははっきりするので、何かあるんだろうと思い・・
う~ん・・・
私がもう少し続けるとすれば・・もっと強弱をつける、ということかな。
と話し、楽譜を示しながら、書かれている強弱記号、メロディーの流れ、曲の構成などを話したり弾いたりしました。
この子からは、「自分が気になっていたのはそのことだ!」というような明確な反応は得られませんでしたが、そのことをテーマにこの曲を続けることになりました。
ゴールが変わることはある
最初に完成のイメージを持ってもらい、練習シートに書き入れてもらいますが、弾いていくうちに変わる、ということはあり得ることです。
音楽もそうですが、芸術にはそもそも明確なゴールはありませんよね。
やっているうちに、もっとこうしたい、ああしたい、が出てくるものですし、それが良さでもあり面白さでもあります。
そして、大事にしたいところでもある。
今回のことも想定内。なので、「どうする?」と聞くわけですね。
本人からはなかなか明確な言葉は得られなかったりします。一生懸命話してくれるんだけどいまいちよくわからない・・とか。
「もっとこんな風に弾きたい」の「こんな風」って、なかなか言葉で表しにくいですよね。
この子は、弾き始める頃には分からなかった曲への新たな思いが、きっと芽生えたのだと思います。
言葉にできない思いを引き出していく、というのはなかなか難しいことです。
でも、毎回のレッスンでのこの子の様子を細かく見ながら、本人の満足いくまでこの曲を続けたいと思います。